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産後うつを取材する中で見えた夫婦の問題~映画『ママをやめてもいいですか!?』豪田トモ監督インタビュー

大泉洋さんがナレーションを務めることでも話題の映画『ママをやめてもいいですか!?』。パパコミでも応援しているこの映画を手がけた豪田トモ監督にお話を伺いました。 映画にかける思い、そして撮影を通じて監督が感じたものとは!?

大泉洋さんがナレーションを務めることでも話題の映画『ママをやめてもいいですか!?』。パパコミでも応援しているこの映画を手がけた豪田トモ監督にお話を伺いました。 映画にかける思い、そして撮影を通じて監督が感じたものとは!?

使命感のようなものが沸いてきた

―まず、この映画を撮ったきっかけですが、聞いたところによると、もともとは「産後うつ」をテーマに撮るつもりはなかったそうですが、いかがですか?

はい、なかったですね(笑)。

きっかけになったのは以前出版した小説『オネエ産婦人科』です。この作品の中で産後うつを取り扱うことにしたのですが、僕はずっと「命」と「家族」をテーマに作品を作ってきたものの、産後うつについてはほとんど知らなかったんです。なので、ちゃんと勉強しないといけないと考えて、ネットを通じて、産後うつについてお話を聞かせてくれる方を募集してみたら、ものすごい数の応募が来ました。

結局、50人くらいの方からお話を伺うことになったのですが、やっぱりそこには僕が知らないことがたくさんありました。苦しみ、孤独感、いろいろな出来事の受け取り方、夫婦の関係など衝撃的でした。僕自身にも小学校3年生の娘がいますが、正直なところ産後うつとは無縁だったと感じているので、なおさらだったと思います。

それで、さらに調べていくと、ママの10人に1人が産後うつになることや、ママの死因の1位が自殺であることなど、驚くことがどんどん出てきて、これはなんとかしないといけないという使命感が沸いてきて、映画を通じて世の中に伝えないといけないと考えました。

話を聞く中で見えてきた夫婦の問題

―実際に、産後うつを経験したママたちの話を聞いた中で印象的だったことはなんですか?

産後うつの話を聞いた方のほとんどに共通点があることに気づきました。
それは、夫に対してすごく不満を持っているということです。

もちろん、産後うつになっているかどうかに関係なく、何かしら夫に不満はあるかもしれないですけど、それがかなり強い。例えば、僕から「産後はどうでしたか?」と聞いても「夫が何もやってくれなくて」と言い始めて、「夜中の授乳はどうでしたか?」と聞いても「夫は起きてくれなかった」という感じです。もう何を聞いても、いつの間にか夫に対する不満の話になってしまうんです。

映画の中でもママたちが夫の不満を語っている姿をまとめているシーンがありますが、実はあの時、僕は一回も「夫への不満を聞かせてください」とは言っていないんです(笑)。

もうここまで来ると、これは真理であり、すごくリアルなところに食い込んでいるものだと感じました。すれ違い、考え方のギャップといった夫婦関係から育児の辛さが始まっているということはちょっとビックリしましたね。そんなことがあるとは考えていなかったので。

最初のうちはママたちが語る夫への不満がよくわからないこともありました。

映画の中でも描いているのですが、パパたちは家事や育児はしていなくても仕事をしていて、その仕事は家族が暮らしていくためであって、家族にとっては大事な一つの要素でもあります。だけど、ママたちの中では「生活費を稼ぐ仕事」というものに対する評価が驚くほど低い。半ば、「当然」のものになっていて、「感謝」の対象ではなくなってしまっているんです。人によっては、僕が「家庭と仕事のバランスが取れずに産後うつになってしまうパパの割合はママとほぼ同じだという統計があるんですよ」と伝えると「そんなのは言い訳だ!」とかたくなに認めようとしない人もいました。

なんでそうなっちゃうんだろう?と考えた時に、やっぱりそこまで追い詰められているからそういう考えに至るのかな・・・、と思うようになってきたんです。

こういう経験から、「ママの孤独」にもスポットを当てるようになっていきました。

あとは、『ママをやめてもいいですか!?』というタイトルは、ママたちの家族や夫、社会に対する問いかけであって、決して「ママをやめてもいいですよ」と推奨しているモノではないので、誤解しないでくれたらと思います(笑)。

産後うつがきっかけにはなっていますが、映画自体は「産後うつの映画」ではなく、ママの子育ての悲喜こもごもを娯楽的に描いたものになっていて、きっと「子育てって最高!」と思ってもらえると思うので、楽しんで見ていただけたらと思います。

子宮出身の人、全てに見てほしい

―最後にこの映画はどんな人に見てもらいたいと思いますか?

子宮出身の人、全てです。

この映画では、産後うつと向き合ったママやその家族の姿を通じて、命の大切さ、家族の大切さ、そしてそれを育んでいくことの難しさ、大変さ、苦しさを感じてもらうことができると思っています。

そして、感じた結果。今の日常に対して感謝することにも繋がるでしょうし、一方で同じように苦しいと感じているママにとっては自分だけじゃないと思えるはずです。まったく赤の他人の家族の姿かもしれないけど共感できるところがたくさんあって、疑似体験ではあるけど、どこか孤独感が薄れてくれたらと。

きっとこれから子育てをしていくパワーにもなっていくと思います。

ドキュメンタリー映画「うまれる」シリーズを通じて10年にわたって命と家族の大切さを伝えてきた豪田監督の思い。ぜひ、この映画を通じて感じてもらいたいです。そして、大変だけど、一緒に子育てを楽しんでいきましょう!