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こんなにある!父親育児のいい効果~石井クンツ昌子先生インタビュー~

イクメンという言葉が流行語大賞を取って10年が経ち、育児に前向きな男性も増えてきていますが、実際に男性が育児に関わることでどんないいことがあるのでしょうか?家族社会学を専門とし、『「育メン」現象の社会学』をはじめとする男性の育児に関する著書を手がけているお茶の水女子大学の石井クンツ昌子名誉教授にお話を伺いました。

イクメンという言葉が流行語大賞を取って10年が経ち、育児に前向きな男性も増えてきていますが、実際に男性が育児に関わることでどんないいことがあるのでしょうか?家族社会学を専門とし、『「育メン」現象の社会学』をはじめとする男性の育児に関する著書を手がけているお茶の水女子大学の石井クンツ昌子名誉教授にお話を伺いました。

 自尊心向上、非行が少ない・・・ポジティブな研究結果がたくさん

元々、自分自身がイクメンの父親に育てられたことから父親の育児に関する研究をはじめました。もう30年以上が経ちますが、特に子どもに対して、父親が育児に参加することがいい影響を与えるという研究結果はたくさんあります。

海外での研究も含めていくつか例を挙げると「父親と多くの時間を過ごした女の子は成人になってからの精神状態が良好」「父親からの愛情を多く受けて育った子どもは成人後の自尊心が高く、人生に対する満足感も高い」「父親の子育て参加の頻度が高いほど成人後の子どもの教育・経済的な業績は高く、反対に、非行は少ない」という結果があります。

さらに「父親とたくさん遊んだ子どもは情緒性、社会性、自発性独立意識が高い、育児をする父親を持つ3歳児は情緒的・社会的発達が良い」「父親とかかわりが多い幼児は友人ネットワークが広い」という結果もあります。

一方で、父親との関わりは生活範囲の拡大にも繋がり、大人に対しても友好的な態度をとれるなど、人間関係の多様性など社会性が豊かで、言語能力が高くなる傾向があることもわかっています。

研究結果なので、もちろん全ての人に当てはまるわけではありませんが、ポジティブな効果が数多く認められていることは間違いありません。

一方で妻には・・・

子どもに対してはポジティブな結果が多い一方で、妻に対してはちょっと気をつけなければいけないポイントもあるようです。父親が育児に関わることで夫婦の意見が食い違い関係が悪化するという負の要因にもなり得るのです。

また、育児に積極的な男性のパートナーは結婚満足度が高いかというと必ずしもそうではないのです。どうやら家事や育児にまったく参画しない夫に対しては諦めのようなものが生まれる、つまりある意味で不満を持たないのですが、いわゆるイクメンの妻たちの声を聞くと「もっとできる」と思ってしまいハードルが上がっていってしまう傾向があるようです。

もちろん、夫婦のコミュニケーション頻度が上がることや、妻のストレス軽減につながるといういい結果もありますので、育児をやらない方がいいというわけではありません。

 父親のストレスは万国共通

研究を始めた1980年代に比べれば日本も変わってきています。男性が育児をすることに対して世間の目はもちろん、男性自身が抱く印象も前向きになっていますし、職場の理解も高くなっていると感じます。今や父親育児の文化は定着したとも考えられますが、諸外国と比較すると育休取得率の低さをはじめまだまだ行動が伴っていないと感じます。

ノルウェーやスウェーデンなどの北欧諸国や、アメリカなどを「イクメン大国」と表現することがあります。実際に父親が家事や育児に関わることが多いのですが、これは伝統的にそういう文化があったのではありません。「育児は母親がするもの」という文化はもともとほとんどの国でもそう思われてきていて、そこから変わったのです。そういう意味では、日本も変わる可能性は充分にあります。

また興味深いのは、仕事や稼ぎと家庭の板挟みになってしまう辛さや夫婦関係など、父親がストレスだと感じがちなポイントは万国共通であることもわかっています。イクメン大国で暮らしているからといって父親が全てハッピーというわけでもなく、どこの国で調査しても同じような悩みが出てくるのは、ちょっと意外に感じるかもしれないですね。

課題はサポートが少ないこと

先ほどイクメンであるほど妻のハードルが上がってしまうと伝えましたが、父親自身もそのハードルを越えようと頑張り過ぎて追い詰められてしまうというケースがあります。しかし、日本では母親に比べて父親に対するサポートが少ないのが現状です。つまり困った時に相談できる環境が足りていないのです。

また、例え相談できる場所があったとしても、相談するのを恥ずかしいと感じるなど父親側の心理的なハードルも大きいように感じます。

こういったことを解消するための方法は人によって様々だと思いますが、一つはパパ友を作ったり、地域やNPOといったコミュニティと関わりを持ち、育児の話ができる環境を作ることが有効だと思います。もちろんこれも人によってはハードルが高いことだと思いますが、前向きに育児に関わるためにはとてもいいことなので、父親同士が繋がるという文化も広がっていけばいいなと思います。