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『きかんしゃトーマス』と非認知能力の深い関係とは!?

2020年に原作出版75周年を迎えたキャラクター『きかんしゃトーマス』。本国イギリスでも愛され、日本でも絵本出版から45年以上、テレビ放送でも30年以上愛されてきました。今回は2020年9月4日に劇場版最新作『映画 きかんしゃトーマス チャオ!とんでうたってディスカバリー!!』が公開となる「きかんしゃトーマス」と非認知能力の関係について株式会社ソニー・クリエイティブプロダクツとともに共同研究を行ったNPO法人東京学芸大学こども未来研究所のメンバーで、芸術・スポーツ科学系准教授の正木賢一先生と芸術・スポーツ科学系講師の森尻有貴先生にお話を伺いました。

2020年に原作出版75周年を迎えたキャラクター『きかんしゃトーマス』。本国イギリスでも愛され、日本でも絵本出版から45年以上、テレビ放送でも30年以上愛されてきました。今回は2020年9月4日に劇場版最新作『映画 きかんしゃトーマス チャオ!とんでうたってディスカバリー!!』が公開となる「きかんしゃトーマス」と非認知能力の関係について株式会社ソニー・クリエイティブプロダクツとともに共同研究を行ったNPO法人東京学芸大学こども未来研究所のメンバーで、芸術・スポーツ科学系准教授の正木賢一先生と芸術・スポーツ科学系講師の森尻有貴先生にお話を伺いました。

視聴本数は200話以上!そこから分類してわかったこと

「遊びは最高の学びである」ということをモットーに遊びがどうやったら学びにつながっていくのかを支援する活動をしているこども未来研究所の皆さん。『きかんしゃトーマス』に関する研究では非認知能力との関係をいくつかの視点で検証したということですが、今回はその中から、『きかんしゃトーマス』を視聴することでの影響についてのお話を伺いました。

―そもそも非認知能力とはどんなものですか?

森尻「これはもともと海外で“Non-cognitive skill”という言葉が使われていて、それを直訳したので、イメージしにくい言葉になっていますが、簡単に言うと認知能力とされる、算数や理科などの科目で問われるような学力などの能力以外の能力ということです。例えば、物事に集中して取り組むことや、難題に立ち向かうこと、主体性、自己肯定感を持つことなどは非認知能力の一部です」

正木「かつては認知能力、つまり学力を強化する流れがありましたが、社会に多様性が広がる中で、それだけはない能力をもっと育てないといけないという流れになってきたこともあって、近年注目されています」

―研究はどのように行ったのですか?

森尻「CG版のアニメーション204話を研究メンバーや学生スタッフで全部観ました。メンバーの一人はもはや今、日本で一番トーマスに詳しいのではないか、というくらいになっています(笑)そして、もちろん観るだけではなくて、その中から“お話の主題”をナレーションやキャラクターのセリフなどから抽出して分析しました」

正木「分析していくと、お話は大きく二つに分類されます。一つはお話の中心を担うキャラクターが自分自身や他者、場、役割について理解を深めていくようなお話。もう一つは他者や場へ自分がどのように関わっていくかというお話。つまり自分という“個”の理解を深めるものと、“社会”に対する自分の関わり方を知るもので、これらはいずれも非認知能力に関わっていくものなんです。また、さらにその中でも要素は分かれています。“他者理解・役割理解・他者への向き合い方・役割との向き合い方”など社会と関わりあって生きていくための大切なテーマ性を含んでいることがわかってきました。そういった作品だからこそ『きかんしゃトーマス』のアニメーションを好んで観る子どもたちは非認知能力の自然な発達が期待できると考えられるのです」

トーマスの世界に詰まった社会の学び

―研究をおこなって気づいた『きかんしゃトーマス』だからこその良さはどんなところですか?

正木「改めてトーマスを観てみると、本当に面白い要素がたくさんあることに気づくことができました。わかりやすい勧善懲悪のヒーローものではないしトーマス以外のキャラクターが主人公となるお話もたくさんあります。そして、毎回何かしらの事件が起こって、キャラクターたちが絡み合い、ゴールを目指していくのですが、そこで描かれているものは、日常的な子どもたちの周りでも起こっていることだったりします。それを機関車のキャラクターたちが繰り広げているんですね。また、人間関係をはじめ、働く、使命感、仲間意識など、ソーシャルなお題が組み込まれているので、これから子どもたちが生きていく社会に繋がっていく内容でもあります。本当によくできていると感じました。トーマスを観ることは、子どもたちが今後成長していく中で知っておいた方がいいことを、エピソード記憶として残すことができると思います。何か困った時に、『あの時トーマスではこうだった』という風に思い出すことでしょう」

森尻「典型的なヒーローじゃないからこそ絶対的な存在にはあまりならないのも特徴だと思います。いわゆる憧れとは違った形の愛着形成かと思います。また、登場人物が人間ではないから遊びとして入り込めるのもいいポイントだと思います。ファンタジーだけど鉄道という身近でリアルなものが出てくるのは絶妙ですね。もちろん子どもによっては、登場人物になりきったり、自分を投影する子もいると思いますが、どちらかというと、そのファンタジーの世界の中に、自分を置いて、自分ならどうするか?と考えられることができる世界観もいいと思います」

トーマスを観たあとに親子でしてほしいこと

―そういうポイントがわかったうえで、今後どのように『きかんしゃトーマス』と触れてほしいということはありますか?

正木「まずは親子で一緒に観てほしいですが、出来ればそのあと会話をしてほしいと思います。『面白かった?』と一言聞くだけでもいいです。感想や気づいたことを言うことが、子どもたちにとってはトーマスを観てインプットしたものをアウトプットすることに繋がるからです。もちろんちゃんとした感想を言えない子もいると思いますが、それも受け止めてあげてください。子どもによってはそれを絵で描いたり、歌にする子もいるでしょう。それもいいじゃないですか。

大人になると、子どもがテレビや動画を観ていると、それを『やめなさい!』と制してしまうところがありますが、今回のトーマスのように研究してみると、そこに学べるものが詰まっていることがあります。まずはそれに気づいてもらいたいです。

ガチガチな、こうあるべきという教育論を語る前に、自分が子どもだった頃どうだったのか?トーマスとどう付き合っていたのかを考えて、子どもたちに接してくれたらと思います」

時代を超えて愛される『きかんしゃトーマス』は純粋に楽しむことができる素敵な作品ですが、実は楽しいだけではなく、子どもたちがこれから成長していくうえで大切なことを学ぶことができるとは驚きですよね。次にトーマスの作品に触れるときはちょっとだけ、作品の中に広がっている社会に注目してみましょう!

そんな『きかんしゃトーマス』の劇場版最新作『映画 きかんしゃトーマス チャオ!とんでうたってデリバリー!!』は9月4日から公開されます。

『映画 きかんしゃトーマス チャオ! とんでうたってデリバリー!!』公式サイト

研究についてさらに知りたい方はこちら

株式会社ソニー・クリエイティブプロダクツ 
東京学芸大こども未来研究所