
日本の子どもたちはもっと「自己肯定感」を高めた方がいい、という話は聞いた事があると思いますが、最近、子育て関連の書籍などでは、同じように「自己有用感」を高めることも大切だと書かれています。今回はNPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事で認定子育てアドバイザーの高祖常子さんに、この「自己有用感」とはいったいどのようなものなのか?また、どうしたら高めることができるのか?伺いました。
「自己有用感」を端的に説明すると、自分が周りの人たちや社会などに対して、何らかの形で役に立っている、つまり有用であると感じることです。
よく聞く「自己肯定感」や「自尊感情」は、ありのままの自分でいいと自分を受け入れて、自分を大事だと感じることです。その違いは、「自己肯定感」が自分一人でも感じられることに対して、「自己有用感」は、他者との関わりがあってはじめて感じられることです。
その多くは、自分がしたことに対して、感謝されたり、認められたり、ほめられたりすることで感じられるもの。例えば、お手伝いをして感謝されたり、町でゴミを拾ってほめられたりすると、子どもは嬉しいと感じますが、それと同時に、役に立っていると感じるのです。
文部科学省は、「自己有用感」を「自己肯定感」の中の一つの要素と捉えていますが、実際に「自己有用感」が高い子どもは、「自己肯定感」が高い傾向があって、相関関係があると考えられています。
たくさんほめられて、たくさん認められ「自己有用感」が高くなった子どもは、率先して誰かの役に立つ行動を取ることができます。例えば、ゴミを拾って誰かにほめられなくても、拾うことが誰かの役に立つことだと認識しているので、行動にうつすことができるのです。また、そういった細かいことに気づいて対応する習慣によって、心遣いや思いやりを育むことにも繋がります。
そして、育まれた思いやりは、子ども同士の中でも発揮されます。友達のいいところを見つけたり、困っていることに気づいたりできることは、雰囲気のいい優しい人間関係を作ることになり、それが友達にもいい影響を与えていくのです。
言ってみれば、“自己有用感の輪が広がる”という感じです。
家族の中でも、それぞれが思いやりをもって接するようにしていれば、家族の雰囲気が良くなるのと同じですよね。
そんな「自己有用感」を育む方法は、やはり、感謝されることや、認められる経験をたくさん積むことです。
親子であれば、声かけが重要。「ありがとう」「助かったよ」という思いを、ちゃんと言葉にして伝えることです。このとき、子どもの名前と行動も一緒に言葉にすることで効果はより高いと言われています。例えば「○○ちゃん、△△をしてくれて、ありがとう」という具合に。忙しい中では、毎回することは難しいかもしれませんが、できるだけ心がけましょう。
もうひとつ大切なことは、こういった子どもの思いやりのある行動に気がつくことです。しっかりと子どもに注目していないと、「ありがとう」や「助かったよ」と声をかけることはできません。
また「自己有用感」は、親だけでなく、より多くの人に感謝や承認されることで高まります。おじいちゃんやおばあちゃん、地域の人、友達のパパママなど、より多くの人と子どもが関わることでその可能性は広がるので、ぜひそのチャンスを作ってください。
時には、周りの人が我が子をほめているのを見て、「そこは気づかなかった!」ということも出てくると思います。近くに居るからこそ気づけない良さを知るきっかけにもなりますし、子ども自身にとっては、いいことや役に立つことの価値観も広がります。
子どもは、年齢を重ねるごとに関わる社会が広がっていきます。いろいろな人と関わり、いい関係を築いていくためにも「自己有用感」を育むことを、ぜひ意識してみましょう。